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コミカライズ『羽ばたき Ein Märchen』フランス語翻訳版 [À tire d'aile. ]

フランスのNOEVE社より
コミカライズ『羽ばたき Ein Märchen(原作/堀辰雄)』(KADOKAWA 2020年)の
フランス語翻訳版 [À tire d'aile]が出版されました。
翻訳版には新たに描き下したイラスト・エッセイ(2ページ分)に
日本語版にはない著者あとがき文を収録。この記事の下、スクロール先に
あとがきの日本語文を掲載しております。

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初の海外翻訳本となるコミカライズ『羽ばたき』--- [À tire d'aile]は
日本語版の装丁デザイナー 芥陽子さんのデザインを踏襲しながらも
フランスのグラフィック・チームによる独自の演出が随所に鏤められており
カバー画の一部の鳩にエンボス加工が施されていたり
オリジナルのタイトル・ロゴには鳩の羽根の意匠が、
特典用に制作された美麗なカードは描き下ろしを含む五種類の図柄で展開し
(一部に金ペンによる直筆サイン入りで挟み込みで流通)
注文スリップのような付属物のディテールに至るまで
手に取るだけでワクワクするような素晴らしい造本で
私の初の海外翻訳本『羽ばたき』を世にはばたかせて下さいました。
とりわけ、上質な本文用紙に黒々と刷られた濃く深いインクの刷色の
うつくしいことに心から深く感動を覚えました。
フランス語版出版にご尽力くださり、『羽ばたき』フランス語版に於いては
翻訳を手掛けて下さった秋山りょうこ様、
NOEVE社CEOベルトラン氏、グラフィック・チームの皆様、
そして翻訳本を手にしてくださった海の向こうの読者の皆様へ
この場を借りて心よりの感謝を申し上げます。

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(フランス版のみの見開き描き下ろしページ。
もしも堀辰雄が生きた時代の日本、帝都東京が
『羽ばたき』の舞台だったなら・・・?
ジジは、こんな女学生のような着物姿だったかもね、という妄想。)
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コミカライズ『羽ばたき Ein Marchen 』フランス語翻訳版
[À tire d'aile](NOEVE社)あとがきより
日本語文による転載

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私の初めての海外翻訳版が、作中で大きな役割を担うレオン・サジイ原作による「ジゴマ」や
原作者である小説家の堀辰雄が愛したプルーストやコクトー等の文学者を輩出した
フランスの地より出版されることをとても嬉しく思います。
堀辰雄(1904~1953)は日本の近代文学を代表する小説家の一人ですが、
代表的な小説作品が広く知られる一方で
きらめく宝石のような美しさを持つ小品たちは、その輝きに比べて注目度が低く
私自身も、とある方の導きがなければこのような魅力的な小品を
堀辰雄が手掛けていたということすら知る機会がなかったのではないかと思います。


数年前に月刊コミック誌から原作付きの連載執筆のオファーを受けた時、
同じ頃に前作の『寝台鳩舎』(2016年刊)のオリジナル原稿を展示する機会があり
その会場へ、評論家でアンソロジストの長山靖生(Yasuo Nagayama)先生が
ご自身が編纂された堀辰雄の初期ファンタジー傑作集を携えてお越し下さり、
直接先生よりそのご本を賜りました。『羽ばたき』はその本の表題作であり、
私は一読して物語の全てと、水晶のように精緻で澄み渡った文章に惹き込まれ
何としても自分の手でコミカライズ化したいという衝動に駆られました。
後日、長山先生は日本版の解説文の中で
「相応しい人に作品を届けたかったから」と、この時の事を表現して下さいましたが
密かに私は『寝台鳩舎』に登場する軍鳩たちからU塔の鳩たちへと、
長山先生を伝令の天使として遣わせてくれるよう秘密の伝達があったのではないか、と
考えています。


ところで、ジジとキキという名前を聞いて
フランスの読者の方の中にも日本のスタジオ・ジブリ制作のアニメーション作品を
思い浮かべた方がおられるかもしれません。
宮崎駿(Hayao Miyazaki)監督によるアニメ作品『魔女の宅急便』(1989年公開)の
原作である同名作品の作者、角野栄子(Eiko Kadono)は、
堀辰雄の『羽ばたき』に因(ちな)んでその名前をつけていたのではないか、と言われています。
同じく宮崎駿監督によるアニメ作品『風立ちぬ』(2013年公開)は
堀辰雄の同名小説に由来しており、実在した航空技術者の堀越二郎(JiroHorikoshi)の半生に
堀辰雄の実体験を元とした小説を重ね合わせた内容が主な題材となっています。
題名の「風立ちぬ」は堀辰雄の小説の題名からの引用ですが、
その大元(おおもと)は言うまでもなく、フランス人作家 ポール・ヴァレリーの詩
『海辺の墓地』の一節に由来するものです。


『羽ばたき』のコミカライズ化にあたっては、
私の独自の解釈によるアレンジを加えた箇所のある事も付記しておきたく思います。
特にラストの部分については、堀辰雄自身が1923年に日本の関東地方を襲った大震災で
母親を亡くしていることから、原作にはない場面を二人の魂への手向(たむ)けとして描きました。
また、原作小説はファンタジー小説らしく無国籍の印象がありますが、
舞台の作画にあたっては私の好きなアジェやドアノー、ブラッサイ等による写真、とりわけ
パリの街角を撮った作品をイメージ上の大きな支柱としました。


最後に、コミカライズ「羽ばたき」のフランス版を刊行して下さいました
NOEVE社のベルトラン氏、そして素晴らしい出版社との架け橋となってくださり、
本作の翻訳も手掛けてくださいました秋山りょう子様へ、心からの感謝を申し上げます。
この本を読んで下さったフランスの読者の皆様が、物語を気に入って下さることを心より願っています。


鳩山郁子
 

コミカライズ『羽ばたき Ein Märchen』のフランス語翻訳版
[À tire d'aile. ](NOEVE社)は
紀伊國屋書店の通販でもお求めいただくことが出来ます。
LINK
                     

              
               





by 2spangle | 2021-12-01 23:55 | 著作物/List of works
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